[E:Case1]カットされたシーン込エピソードガイド(1)『Endeavour 2012/華麗なる賭け(ある晴れた日に)-新米刑事モース』
遂に、つーいーに!ヤング・モース(別名、ベイビー・モース)を描いたドラマ『Endeavour/(新米)刑事モース~オックスフォード事件簿』のプリクエルとシリーズ1第1話が日本放送となりました!
2012.01.02にイギリスで放送された『Endeavour 2012/Case:1 華麗なる賭け』。** 本当は1時間42分31秒あるのですが、日米ではどうやら1時間30分きっかりくらいしか放送できないようで、10分強がばっさりとカットされてしまっています。**
イギリス放送ではノーカットですが、そこは仕方ないのかもしれません。
ということで、折角なのでカットされてしまったシーン(英米版DVD/BDにはノーカット収録)を追加して、100%ネタバレの粗筋&感想を。
まだご覧になっていない方は日本放送をご覧になってから読まれることをお勧めします。
いやもうほんと、この↑デンプシー氏は確かに削除しても問題ないんですけれど、全シーンカットだなんてちょっと不憫で(笑)
尚、ワタクシめ、ショーン・エヴァンスの演じるEndeavourとロジャー・アラムの演じるDI Thursdayの疑似親子関係が好きな上に、登場人物に感情移入して切なくなるタイプですので、少々感想がヒートアップするかもしれません。盛り上がりすぎている場合は生暖かく笑ってスルーしてやってください。
「Endeavour(Pilot)/華麗なる賭け」カットされたシーン込エピソードガイド(1)
※さすがに1時間半の作品、劇的に長くなったので前後編に分けます(汗)
※モースはそういう物語なのですが、登場人物がめちゃくちゃ多くて、しかも最初は誰もが怪しいのでスクリーンショットを適宜入れています。
ネタバレ注意!
©ITV/Mammoth Screen
豪雨の中を走る車が1台。カーラジオから日曜日の午前6時を告げたBBCニュースが流れている。
<カットされたシーン> 00:22-
豪雨の中、黒い車が止まっている。運転席にいる男(デンプシー)は煙草をくわえながら、助手席に置いていたカメラを手に取る。雨に打たれるフロントガラスの向こうには大きな屋敷があり、高価そうな車が何台も並んで止まっている。
豪華な邸宅で、身なりのよい老人が2人、バックギャモンで遊んでいる。
BBCニュースが流れている車、運転手はハンドルを握りながらフロントグラスをタオルで拭き、バス停に赤毛の女性が立っているのを横目に見る。女性は白と緑と黒の奇抜なデザインのドレスを着ていた。運転手、通り過ぎる。
豪華な邸宅内、誰かがカーテンを開けて光を入れると、床やソファに半裸の男女が何人も転がっているのが見える。
BBCニュースを流して走っていた運転手、家に着いて手を洗おうとする。袖口に血痕が付いているのを見て、ブラシで洗い落とそうとする。
ー- カーシャル・ニュータウン警察 ー-
大音量でオペラが流れている部屋。マクリーシュが「モース、飲みに行かないか?」と声をかけるが、レコードの音にかき消されて部屋の主モースは気が付かない。
焦れたマクリーシュ、レコードを止めてモースの注意を引き飲みに誘うが、「僕は飲まないよ、知ってるだろう?」とモースは断る。モース、実は辞職願をタイプライターで打っているところだった。
翌朝、モースとマクリーシュはマイクロバス1台分の他の警察官と共にオックスフォード市警に派遣される。市内の女子高に通うメリー・トレムレットという生徒が失踪し、その捜索を手伝うためだった。窓の外を眺めるモースにマクリーシュが話しかける。「この事件から降りたいって言ったんだって?」
オックスフォードのカウリー署に到着した一行。ロット刑事部長はそれぞれの配属を告知し、モースとマクリーシュはメリー・トレムレット失踪事件に配属される。ロット刑事部長が口にした「デカい殺し」と言う言葉に「失踪事件では?」と問うモース。ロット刑事部長は鼻で笑ってきっと殺しで性犯罪だろうと言った。
ロット刑事部長は2人に仕事を割り振る。マクリーシュは電話取りと日誌を書くデスクワーク。モースは「土地勘がある」とのことで聞き込み。「オックスフォード出か?」と揶揄るロット刑事部長。
ロット刑事部長の「店やオフィス、駅、勤め人」に聞き込みをしろとの指示を、モースは「勤め人?」と遮る。土曜日の夕方から姿を消した人間を、“勤め人”が見かけているわけがない。苦笑しながらツッコむモースにロット刑事部長は苦い顔をする。マクリーシュにも「オックスフォード出なのか?(Bloody Oxford?)」と言われるモース。
「はぁ?通勤者って何言ってんですか、ぶちょーw」なんて顔をするモース(爆)
下宿に案内されるモース。「オックスフォードは初めて?」と大家に問われ、否定。窓の外を眺めるモース、ブロンドで半裸の若い女性(スーザン)の姿を回想する。
警察署、デスクライトをつけてメリー・トレムレット事件の写真を虫眼鏡で眺めるモース。ベッドサイドに積まれている本が気になるらしい。「残業はつかないぞ」突然声をかけられ驚くモース。「この時間まで残っているバカはゴマすりかマゾヒストだ」というのはサーズデイ警部補だった。
メリー失踪事件について概要を話し、メリーが持っていたハードカバーの詩集が気になる、例え詩が好きな女子学生だったとしても高価なハードカバーを学生が小遣いで買えるとは思わない、とモースは続けるが、サーズデイは「捜査には手順がある」ので本は気にするなと言い残して帰宅した。
翌朝、モースはメリー・トレムレットの自宅を訪ねた。父親と結婚して家を出ている姉シャロンと会い、気にかかっていたメリーの詩集を持ち帰る。
メリーの通っていた高校では、彼女のクラスメート達3人が何か心配そうにコソコソと話をしていた。
<カットされたシーン>
17:00-17:48
現像室で、デンプシーが写真を現像している。現像液に漬けた写真に写っているのは、冒頭でバックギャモンをしていた老人の1人。受話器を取り上げ、デンプシーはオペレーターに2005へ繋ぐように話す。接続を待つデンプシーの後ろには、メリー・トレムレットを隠し撮りしたような写真が何枚か吊り下げられていた。
メリーの私室にあったハードカバーの詩集を持って出勤したモース、川べりで見つかった自殺死体の捜査に行くようにロット刑事部長に言われる。どうやって現場に?と問うが、ロット刑事部長は自分でどうにかしろと言い捨てて部屋を出て行ってしまった。
死体発見現場へ着いたモース。頭を銃で撃ち抜いた青年の死体検分をしている検察医マックス・デブリンと会う。血が付いた手袋をしたまま握手の手を差し出すマックスに困るモース。マックスが死体の状態を細かく描写するが、モースは気持ち悪そうに顔を顰めてあらぬ方向を向いている。
死体に近寄りもせず分かったというモースにマックスは言う「吐きそうか?自分の目で死体をしっかり見ないといい刑事にはなれないよ」。けれどモースは死体に近づかず、車の方へ逃げてしまった。
<カットされたシーン>
20:14-20:40
Tedが新聞を見ている。メリー・トレムレットを見かけなかったかとトップ記事。
窓の外を見る。メリーの学校の女の子(ヴァレリー)が自動車工ジョニー・フランクスに会いに来ている。ヴァレリーが髪を触りながらぶりっ子モードでジョニーと話しているのを窓越しに見るTed。
車で警察医マックスを待つモース。午後3時から解剖をやると言われ、結果は電話でよろしくと頼むと「君みたいな人間を死体恐怖症というんだよ」と揶揄られる。めげずに言い返すモースにマックスが拳銃の種類を伝えると、モースはそれが軍用拳銃だと指摘し、マックスはモースがバカではないらしいと彼を見直す。
死亡時刻は昨夜20時から0時、遺留品や遺書はなし。マックスから死体のポケットにあったジェリコ住所のマイルズ・パーシヴァル宛の手紙を受け取ると、モースは帰ろうとしたマックスに送ってくれないかと頼む。
マイルズの家を訪ねたモース、ルームメイトのオーストラリア人ロマックスにマイルズの様子を尋ねるがこれと言った手がかりは得られず、指導教授がロンズデール・カレッジにいることだけが分かった。
ロンズデール・コレッジの門を複雑そうな顔で見上げるモース。(昔モースがいたコレッジ)
コレッジ内でいきなり声をかけられ振り向くと、かつての同級生アレックス・リースだった。
今は警察官で警察の仕事でコレッジに来たと話すモースに、リースは「外人部隊に入ったと聞いたけど合わなかったか?」と問う。「(外人部隊ではなく)通信軍団。合わなかった」と答えるモース。リースはコレッジ長を目指して野心的に学問の塔を登っていた。
マイルズの指導教授ストロミング博士を訪ねるところだと言うモースに、リースはストロミング博士が今日はいないことを教え、歩きながら結婚相手は大事だと話し出す。モースの昔の彼女スーザンの話を軽くした後、リースは「コレッジに関わることには気をつけろ」とモースに警告する。「同類の侵入者は歓迎されない」と。
モース、ストロミング博士の自宅を訪ねるが誰もいない。そこへ1人の美女が帰って来て、ストロミング博士は不在だとモースに告げた。本人と直接話したいので、と伝言を残さず辞そうとしたモースだったが、我慢しきれないように笑みをこぼして女性を振り返る。「失礼ですが、、、ミス・キャロウエーですか?ロザリンド・キャロウエー?」
彼女は、モースが寮の自室で大音量でかけていたオペラ・レコードのジャケットを飾っていた女性だった。恥ずかしそうに笑った女性は「今はミセス・ストロミング」だと笑顔で答える。
「あなたのレコード、全部ではないですけれどたくさん持ってます。特に、54年の『蝶々夫人』は、孤島に1枚持って行くならあれです!」興奮したように話すモースを、ロザリンドはお茶に誘った。夫であるストロミング博士はじきに帰ってくるはずだ、と。
ロザリンドとお茶を飲みながら、モースは彼女がもう舞台に立たないことを残念がる。夫を置いて海外公演に行くのが嫌だったからとロザリンドは話し、今は聖歌隊で水・土の夜に練習していること、もうすぐチャリティーコンサートがあってそこで久しぶりに歌うことを話した。
モースはチケットがまだあるか尋ねるが、完売したと聞いて肩を落とす。そこへ、ストロミング博士が帰ってきた。
マイルズ・パーシヴァルが自殺体で発見されたことを聞き、ストロミング博士は驚く。最近、マイルズは学業がおろそかになっていて、停学の話も出ていたという。
夜、帰宅したモースは、メリー・トレムレットの家から持ち帰ってきたハードカバー初版の詩集(「シロップシャーの若者」とベッチェマンの「詩選集」)を調べる。詩集にはオックスフォード・メールのクロスワードパズルが挟んであった。それぞれのパズルは、左上の横の行と右下の縦の列だけに答えがかかれており、それらは地名と数字になっている。
翌朝、モースはオックスフォード・メール新聞社を訪ねた。クロスワードパズルの制作者オズ(OZ)について聞こうとしたが、編集長のドロシアに寄稿は匿名で無報酬だと言われる。
彼女は「Inspector Morse」でモース主任刑事を演じたジョン・ソウの実娘、アビゲイル・ソウ。S1、S2でもレギュラー出演。
クロスワードパズルの原稿は水曜日の朝一に届けられることになっているが、珍しく先週だけは届くのが遅く、大変な思いをしたらしい。郵便ではなく学生らしい若い男が直接持ってきたが、受け取ったスタッフが山に登っていて人相を聞くことは不可能だった。
警察に行ったモースは、病欠のロット刑事部長の代わりにサーズデイ警部補を迎えに行くことになる。モースは気持ちよさそうに黒のジャガーを運転してサーズデイの自宅に向かった。
モースが「終わった話」のはずのメリーの詩集を追いかけたことにサーズデイは驚くが、モースの突飛な推理をクリスプ警視正に報告することにする。
メリーが失踪した土曜日、彼女はクロスワードパズルの制作者に指示されたとおり、午後8時にバグリー・ウッドに行ったのではないかとのモースの推理を聞き、クリスプ警視正は少々奇想天外ではないかと言い、ロット刑事部長は戯言を並べずにマイルズの自殺事件を調べろとモースを追い払おうとする。
ちょうどその時、バグリーウッドでメリーと思われる赤毛の少女の死体が見つかったとの情報が入り、モースはそれ見たことかとロット刑事部長を見やらずにはいられなかった。
バグリー・ウッドで見つかった死体は、服を半分脱がされており、右手の甲に「FLA17」と書かれていた。17の次にはBとも8とも読める文字が続いている。
モースとサーズデイ警部補は、発見されたのがメリー・トレムレットかどうかの確認を病院で行なった。
<カットされたシーン>
36:09-36:32
メリーの遺体にかけらた白い布をめくるマックス。ガラスを隔ててスタン・トレムレット(メリーの父)がサーズデイ警部補と立っており、トレムレットはメリーを見て項垂れる。
メリーの姉シャノンとモースは廊下で2人を待っていた。沈痛な顔で出てきた父親の顔を見てシャノンは嗚咽を漏らし、膝から崩れ落ちる。モースは慌ててシャノンの側に駆け寄り、嘆き悲しむシャノンの背中に手を添えて慰めてやった。
そのころ、メリーの死体発見現場で、ガラス面が割れた腕時計が発見された。拾い上げたロット刑事部長は、時計の裏面に8.10.64(1964年10月8日)と彫られているのを確認する。
モースとサーズデイ警部補は、メリーの検死解剖に立ち会う。マックスが頭蓋骨を露出させたところでモースは失神し、サーズデイ警部補は慌てて彼を抱き留めて床に転がし、マックスは電ノコを手に溜息を吐いた。
パブのテラス席。サーズデイ警部補はエールを2杯持ってモースの向かいに座り、モースに1杯渡した。「実は僕、飲まないのです」とモースは辞退しようとするが、「グッといけ」とサーズデイ警部補に言われ、渋々ジョッキに口をつける。
サーズデイ警部補がエールを持ってくる時後ろに映るこのおじいちゃまが、モースシリーズの原作者コリン・デクスター。今後もカメオ出演ありv
サーズデイ警部補は自分も最初は似たようなものだったと自らの経験を話し、モースに謝る必要はないと伝える。
メリー・トレムレットの死因はブラジャーによる絞殺、服を脱がされてはいたがレイプの痕跡はなし。半年間のうちに腕の良い医者が中絶をしていた。胃の内容物は貝(whelk)。発見現場に落ちていた男物の腕時計は8時16分を指していた。
メリーの学校へ行って友達に話を聞けと指示を受け、モースは学校へ向かう。メリーと映画に行く約束をしていたヴァレリーは、メリーが死体で発見されたと聞いて取り乱し、モースは何も聞き出せずに校舎を後にする。車に戻ったモースは彼を待っていた別の同級生アンからメリーがヴァレリーと2週間前にボーイフレンド(パークタウンの自動車工ジョニー・フランクス)を取り合って喧嘩したことを知らされた。
モースがジョニー・フランクスの働く修理工場兼中古車販売のサミュエルズ・ガレージに行くと、ジョニーはメリーは彼女ではなく、メリーにはマイルズと言う彼氏がいたと話した。モースはマイルズのルームメイト、ロマックスから彼らが半年前に別れたこと、マイルズがメリーに男がいると思い込んでいたことを聞き出す。その男とは、ロザリンドの夫ストロミング博士だった。
ストロミング博士は、メリーと自分の間にはアカデミックな関係しかなかったとモースに説明した。コレッジのパーティにマイルズがメリーを連れて来た時、下町育ちのメリーにギリシア文学を教えてコレッジ関係者をからかおうとアレックス・リースが言い出し、その賭けに乗ってメリーに個人講義を施したがメリーはしばらくしたら飽きたらしくて続かなかったと言う。
モースがリースに確認すると、リースはメリーは「オダリスク(女奴隷、または寵姫)」だったと見下したように話した。リースの非情さに「昔はそんなに冷酷じゃなかったのに」とモースが驚くと、リースはモースが「マトモすぎてオックスフォードには合わないな」と笑うのだった。
ある大きな邸宅(アップルゲート)で電話が鳴り響く。館の主(冒頭でバックギャモンをしていた老人の1人)が受話器を取り、メリーが死体で発見された新聞記事を見ながら「ショックだねぇ」と相槌を打つ。電話相手に「何かあればフラックスマン1788(Flaxman1788)にかけてくれ」と念を押し、彼は受話器を置いた。
カウリー警察では、ロット刑事部長がメリーのハンドバッグに入っていた証拠品の中から、サミュエルズ・ガレージのオーナー、テッド・サミュエルズの名刺をこっそり取り出し、周囲を見渡したあと細かく破り捨てた。サーズデイ警部補が後ろからその様子を見ていたとも知らずに。
朝、下宿で髭を剃っていたモースはラジオのニュースからクロスワードパズルの寄稿者OZがストロミング博士であることに気づき、コレッジに行って博士を問い詰める。
シラを切るストロミング博士にモースは詩人シェリーの「オジマンディアス(Ozymandias)」を暗唱してみせ、ストロミング博士がオックスフォード・メール新聞のクロスワードパズルを使ってメリーに密会の場所と時間を伝えていたこと、土曜日の夜8時にバグリー・ウッドでメリーと密会する予定だったことを暴露する。
しかし、ストロミング博士はそのクロスワードパズルは来週掲載する予定のもので、自分はヒンクシーで6時にメリーと会おうとしていたと主張した。病気になったりした時の為に、「名のある製作者」は先の分まで作っておくもの。ヒンクシーで6時とセットしたパズルを掲載したつもりだったから、「それでメリーは来なかったのか…」とストロミング博士は呟いた。
ストロミング博士のクロスワードパズルは妻のロザリンドがいつも投函しているとのことで、モースはストロミング宅を訪ねる。ロザリンドはリハーサルでパズルの投函をすっかり忘れており、夫を訪ねてきたマイルズに頼んで水曜日にパズルを新聞社に届けてもらったとモースに話す。
詳しいことはマイルズに聞けば分かるというロザリンドにモースはマイルズが拳銃自殺を図ったことを知らせ、ストロミング博士が土曜の18時に家にいたかを問いただす。ロザリンドは18時に家を出た時も彼女が23時に帰宅した時(聖歌隊の練習後、車がパンクしたので帰宅に時間がかかった)も夫は在宅していたと言った。
なぜ夫のアリバイを?と訝しむロザリンドに、モースは聞きづらい事だがと断りながら、彼女と夫の夫婦仲に問題はないか、夫の浮気を疑ったことはないかと切り出す。ロザリンドは、浮気を疑ったことなど一度もないと激しく怒り、練習があると席を立ってしまった。
モースはサーズデイ警部補に促されて、クリスプ警視正にストロミング博士が疑わしいとの推理を話す。ストロミング博士連行をクリスプが許可した時、ロット刑事部長がその推理は間違っていると口を挟んできた。モースはメリーが土曜日の夜8時に殺害されたことを前提にしていたが、日曜日の朝6時にバス停でメリーを見た人間が出てきたのだ。
メリーを目撃したのは、夜中の2時から子牛の出産に立ち会った獣医だった。逆子で窒息しかけていた子牛のお産がなんとか終わった後獣医は帰途につき、カー・ラジオで朝6時のニュースを聞いた時にバス停で奇抜なドレスを着た赤毛の女の子を見かけたと証言したので、メリー殺害現場にあった時計は午後8時16分ではなく、午前8時16分を指していたことになる。その時間、ストロミング夫妻は教会で目撃されていたのでメリー殺害は成り立たない。
メリーが日曜日の朝まで生きていたとして、土曜日の夜からどこにいたのか。
モースとサーズデイ警部補はその点がすっきりしないと感じたが、遺体の側にあった時計がマイルズ・パーシヴァルの成人記念に両親から贈られたもので、マイルズがメリーの元彼だったことから、ロット刑事部長とサーズデイ警部補は2つの事件はマイルズが嫉妬からメリーを殺して自殺したものだと断定した。モースはメリーを愛していたマイルズが殺すはずはないと主張したが、マイルズがメリーの遺体発見前に自殺していたためモースの主張は退けられる。
推理を否定されたモースは釈然としないままパブに入り、ビールを煽る。そこへ入ってきた聖歌隊の一団の中にロザリンドを見つけ、モースは先日の非礼を詫びた。ロザリンドはまだ少し立腹気味に見えたが、警察の仕事だからと理解を示し、夫は本当に浮気をしているのだろうか、自分は愚かな妻だろうかとモースに問う。
「あなたのような妻がいてよそ見をするなんて狂ってますよ、ストロミング博士は狂ってないでしょう?」
ロザリンドにブランデーを驕り、モースは彼女と席に着く。「ロンズデール・コレッジで古典を専攻していたのになぜ警察官に?」ロザリンドに尋ねられてモースは「不思議ですよね」と苦笑した。
モースの父はタクシー運転手(免許を失くすまで)で、母親はクエーカー教徒だった。いきなりクエーカー教徒と言われてロザリンドは爆笑したが、モースが12歳の時に死んだと知って顔を曇らせる。母親の記憶が徐々に薄くなっていくこと、柔らかく、優しい印象しかないことを淋しげに話すモースに、ロザリンドは言葉を失う。
ロザリンドが帰った後、モースは一晩中アイシス川(テムズ川のオックスフォードから上流の呼び名)のほとりのベンチに座って川を見ていた。空が白み、モースは何かを決意したように立ち上がる。カウリー警察のクリスプ警視正の部屋に入ったモースは、警視正が不在だったので机の上に辞表を置こうとするが、彼の娘ジェニーの写真を見つけてそれを手に取った。ジェニーは、メリーの同級生だった。
→その2に続く